statue-3808510_1920





社会保険の歴史についても、
社労士試験の試験範囲です。

頻出箇所ではないですが、毎年何らかの形で
どこかの部分が出題される非常に厄介な分野
です。

実際に出題されている以上、
出題者が社労士として抑えてほしい「一般常識」
と考えているということですが、
余裕がなければ後回し、
もしくは全く手つかずでも
合格できないことはありません。

ただし、この分野を押さえておけば、
足切りのリスクがぐっと下がる
ので
お得です。








1:世界初の社会保険



以下の通り、
ずばり過去問にそのまま出題されています。



平成28年度社一選択式
世界初の社会保険は【 A 】で誕生した。当時の【 A 】では、資本主義経済の発達に伴って深刻化した労働問題や労働運動に対処するため、明治16年に医療保険に相当する疾病保険法、翌年には労災保険に相当する災害保険法を交付した。



候補の選択肢は
1:アメリカ
2:イギリス
3:ドイツ
4:フランス
です。

私は「資本主義経済の発達」との言葉
から、
世界史でお馴染みのイギリスの産業革命が
きっかけと考えて最初「イギリス」と
回答しました。

「工場法」という言葉も、子供の時に読んだ
漫画世界の歴史で覚えています。

しかし、正解は「ドイツ」です。

産業革命がイギリスから始まり、その後
ヨーロッパ各国、植民地を中心とした海外へと
広まっていったことは世界史の通りです。

それに伴って、労働問題が顕在化し、
対策を取らなければならないという流れも
どの国も同じですが、ドイツに関しては、
単純に労働問題を解決するだけでは
済まない事情がありました。


当時のドイツは、そもそも多数の国家の集合体
で、むしろ産業革命が遅れていた地域です。

ドイツという国がまだ無い中、
産業の発達状況は各集合体毎にまちまちでした。

それを
ドイツ帝国として一つにまとめ上げた
ビスマルクが、統一による国力強化と、
統一したばかりの国内の反乱、再分裂を
避けるために執った「飴と鞭」政策が
社会保険誕生の背景
です。

イギリスの工場法は1833年制定で、
ドイツの疾病保険法が制定された1883年より前
ですが、工場法はあまりにひどい労働環境を
制限するという「労働基準法」的な観点なので、
社会「保険」ではありません。

ドイツ帝国では、すでに個々に産業革命の恩恵を
受けて力を付けていた大企業や組合の自主性にも
考慮する必要があった点で、各企業、各組合で
既に行われている独自の助け合い制度に
国か監督、補助する仕組みを検討する必要があり、
その結果が社会「保険」である
疾病保険法
というわけです。

貴族社会のイギリスより、
統一体制維持のために
「国内のご機嫌取り」をする必要が
あったドイツのほうが、
システムとして完成された
国民保護の必要性が高かったということです。



え、今何の話をしているのかって?



もちろん「社会保険労務士試験対策」の話です。





2:日本の社会保険の歴史



このような問題が実際に出題されています。



令和元年度社一問10
社会保険制度の改正に関する次の①から⑥の記述について、改正の施行日が古いものからの順序で記載されているものは、後記AからEまでのうちどれか。
①被用者年金一元化により、所定の要件に該当する国家公務員共済組合の組合員が厚生年金保険の被保険者資格を取得した。
②健康保険の傷病手当金の1日当たりの金額が、原則、支給開始日の属する月以前の直近の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額を30で除した額に3分の2を乗じた額となった。
③国民年金第3号被保険者が、個人型確定拠出年金に加入できるようになった。
④基礎年金番号を記載して行っていた老齢基礎年金の年金請求について、個人番号(マイナンバー)でも行えるようになった。
⑤老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上から10年以上に短縮された。
⑥国民年金第1号被保険者の産前産後期間の国民年金保険料が免除されるようになった。



少なくとも、試験対策として必ず覚えなければならない年号は以下の通りです。

①健康保険法
大正11年(1922年)制定
昭和2年(1927年)施行

②国民健康保険法
昭和13年(1938年)制定、施行
昭和36年(1961年)全市町村対象

③船員保険法
昭和14年(1939年)制定、翌年施行

④厚生年金保険法
昭和16年(1941年)に
前身の労働者年金保険法制定、翌年施行
昭和19年(1944年)に
厚生年金保険法に改称

⑤国民年金法
昭和34年(1959年)制定
同年11月無拠出制施行
昭和36年(1961年)拠出制施行

⑥介護保険法
平成9年(1997年)制定
平成12年(2000年)施行

⑦確定拠出年金法
平成13年(2001年)制定、
同年10月施行

⑧確定給付年金法
平成13年(2001年)制定、翌年施行

⑨高齢者の医療の確保に関する法律
昭和57年(1982年)に
前身の老人保健法制定、翌年施行
平成18年(2006年)制定、
平成20年(2008年)施行

⑩全国健康保険協会設立
平成18年(2006年)制定、
平成20年(2008年)施行

⑪日本年金機構設立
平成19年(2007年)制定、
平成22年(2010年)施行

これらの年号を基準として、いつ、どこで、どのようなことが起きたのか、
その変遷の流れを意識すること
が非常に重要です。

併せて、最近の試験範囲では法改正が頻繁
なので、その流れをきちんと把握しているかは、
「社労士の一般常識」としてわかっていなければなりません。
(令和4年にもなって、「老齢年金は25年加入していないともらえませんよ」とドヤ顔で言う社労士がいたら笑いものにすらなりません

これはもう日頃の意識付けでしか
身に付けられません。

社労士試験の試験範囲に関するニュースは、世間でも注目度が高いせいか、ネットでも新聞でも毎日ひとつは目にすることができます。
(間違い、もしくは説明が不十分なものも含めて)

こういったニュースは
意識していないと見逃しますので、
意識して見逃さないようにしてください。





3:まとめ



今回の社会保険の歴史については、
社労士受験生はどう思うんでしょうね。

私は勉強の気分転換になって結構面白かったですが、
その重要性に気付いたのは随分と後になってからの話です。

「この分野は別にやんなくてもいいか」

そう思うのは素人の発想なんだと、
合格した今になってわかります。





>>次回【もらえる年金を多くする4つの方法


>>前回【最後にして最難関の労一選択式の秘策7つを伝授


The 社労士試験のススメ? トップページ